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ていてんをみてのかんそう
帝展を観ての感想
宮本 百合子
「婦人文芸」1934(昭和9)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,058 字 · 7 页
全く違った意味で印象にのこっている油絵がもう一つある。それは「ピアノの前」という題で一人の背広服の紳士と並んで訪問服の洋装夫人が腰かけている左手のソファーに、一人全裸体の女が横になっている大きな絵である。作者猪熊弦一郎氏はアトリエへ訪ねて来た雑誌記者に向ってその絵は「三人の異った人間の性格を描き分けようと云うのです。右の男は田舎の素封家の主人、真中はワイフ、左は職業婦人。この三人の気分がのっていますかね」と語りながらその絵と並んだ自身の写真を撮らせているのである。けれども、私にこの絵は必然性が疑われる絵として眼にのこった。
田舎素封家の漫画的鈍重さ、若い軽やかな妻の無内容な怠惰さ、そして職業婦人が或る皮肉をもって裸一貫であることを作者は諷刺しようとしたのかも知れないということは分るけれども、例えば職業婦人がその性格を発揮するのは職場での仕事においてであると思う。モデルという職業婦人は現実の職場でも裸になるのではあるが、私はそのモデルでさえ、職業における個人の性格の閃く瞬間は、彼女が将に全身をあらわそうとする時にあると感じる。猪熊氏が画面の新奇なくみ合わせに自分から興じているように私には感じられたのであった。