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ばくまついしんかいこだん

幕末維新懐古談

高村 光雲

16 その頃の消防夫のことなど

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,047 字 · 5 页

青空文庫

これは火を上へ抜かすので、その頃の唯一の消火手段であった。

で、この消し口を取るということがその組々の一番大事な役目であって、この事から随分争いを生じたものである。何番の何組がどの消し口を取ったとか、それによって手柄が現われたので、消防夫の功績は一にこれに由って成績づけられたものです。それで、纏のばれんは焼けても、消し口を取ると見込みをつけた以上、一寸も其所をば退かぬといって大層見得なものであった。

消し口を取ると、消し札というものをぶら下げた。これは箱根竹に麻糸で結わえた細い木の札で、これが掛かると、その組々の消し口が裏書きされたことになったのです。

その頃は、豪家になると、百両とか、二百両とか懸賞でその家を食い留めさせたものです。こういう時には一層消防夫の働きが凄まじかった。

一体に、当時は町人の火事を恐れたことは、今日の人の想像も及ばぬ位である。それは現今の如く、火災保険などいうような方法があるではなく、また消火機関が完全してもいないから、一度類焼したが最後、財産はほとんど丸潰れになりました。中には丸焼けになったため乞食にまで身を落とした人さえある。