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ばくまついしんかいこだん

幕末維新懐古談

高村 光雲

13 浅草の大火のはなし

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,524 字 · 6 页

青空文庫

手当り次第に物を持って、堂の後ろの河岸の空地へと目差して行く。

荷物を運ぶのは何処も同じことですから、見る見る中に、この辺は荷物の山を為す。ところが、横丁々々から一斉に吹き出した火は長いなりに大巾になって一面火の海となり、諏訪町、駒形一円を黒烟に包んで暴れ狂って来た。

で、今度は広小路の方へ追われて出て、私たちは広小路の万年屋(菜飯屋)の前へ荷物を運び出しました(万年屋は師匠の家のしるべでした)。

すると、風が西に変って強くなったものだから、一度南進した火先は、先方へ延びずに後へ退り、西飛の癖として、火先へ延びず、逆に尻火に延び、反対に退却した形になって仲町から田原町へと焼けて来た。それのみならず、今度は、その後退した火先は、西風に煽られて物凄い勢いをもって広小路へ押し出して来たのです。

一体、浅草は余り火事沙汰のない所故、土蔵など数えるほどしかなかった。それに安政の大地震の際、土蔵というものが余り役に立たなかったことを経験しているので、一層数が少なかった。ただ、酒屋の内田に五ツ戸前ばかり、他に少々あったほどだから、枯れ草でも舐めるようにめらめらと恐ろしい勢いで焼いて行く。