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ばくまついしんかいこだん
幕末維新懐古談
高村 光雲
20 遊芸には縁のなかったはなし
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,520 字 · 5 页
私などもいろいろの宴会なぞの席で芸なしで困ることが度々ある」
などいい出され、それから師匠は、仕事ばかりに熱中するは結構なれども、そればかりでは彫刻でもやろうというものには、頭が固くなるともいえる。それで、何か気晴らしの緩和剤として、遊芸をやって見よ。お前の性質ならば間違いもあるまいから、など至極打ち解けたお言葉に、私も十八、九の青年のこととて心動き、何か一つ自分もやって見ようかな、という気持になった。
しかし、私は声を出して歌を唄う方のことは、親から厳しく止められている。これは例の富本一件で、腹に滲み込んでいることであるから、声の方の芸事は問題ではないが、声を出さない方の芸事ならば、師匠の申さるる通り、やって見ても差しつかえもなかろうということを考えました。そこで私は偶然思い附いたことがあったので、これは旨い考えだと思いました。
その頃、師匠の家は駒形(今の鰌屋の真向う)にあって表通り、裏は駒形河岸、河岸の家の尻と表通りの家の尻とが相接していて其所に長屋の総井戸が、ちょうど師匠の家の台所口にある。隣家は津田という小児科の医者、その隣りが舟大工、その隣りが空屋であったが、近頃其所へ越して来た母娘の人があった。