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ばくまついしんかいこだん

幕末維新懐古談

高村 光雲

38 象牙彫り全盛時代のはなし

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,595 字 · 4 页

青空文庫

けれども、まだ、明治八、九年の頃は牙彫りの流行も微々たるもので、根附師が二寸か三寸位の大きさのものを彫っていた位、もっとも材料に制限があることとて、三寸か三寸五分位の大きさが頂上で、五寸とあるのはなかなか無かった。それは、象牙木地は大部分は三味線の撥に取って、その後の三角木地を根附師が使ったものであるからである。で、十年の博覧会に出品された象牙彫りの作品もかなりはあったが、まだまだ大きさも小さなもの、図柄なども、貿易商人の好みのままに、乗合舟、鳥追、猿廻しなど在来の型の通りで、中には花見帰りの男が樽の尻を叩いて躍っている図などもあったが、一般にまだ極幼稚でありました。

しかるに、わずか三年位の間に、流行というものは恐ろしいもので(もっとも、これは外国貿易品で、欧米人の嗜好が基ではあるが)彫刻の世界は象牙で真ッ白になってしまいました。そうして外人の嗜好に一層投じようと、種々工夫を凝らすため、したがって大作と称するものが出来、七、八寸から一尺位象牙の木地一杯に作ってその出来栄を競ったもの、されば、その頃は、彫刻といえば象牙彫りのことのように思われ、木の代りに象牙が独り全盛を極め、明治十四年の博覧会の時などは、彫刻は全部象牙彫りで、「象牙にあらざれば彫刻にあらず」