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ばくまついしんかいこだん
幕末維新懐古談
高村 光雲
42 熊手を拵えて売ったはなし
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,159 字 · 9 页
田圃の中には燈火が万燈のように明るく点っている。平生寂寥の田の中が急に賑わい盛るので、その夜景は不思議なものに見える。時候も今日のように冬に入る初めでなく、陰暦の十一月ですから、筑波颪がまともに吹いて来て震え上がるほど寒い。その寒さを何とも思わず、群衆はこね返している。商売人の方はなおさら、此所を先途と職を張って景気を附けているのです。
しかし、札附きの商売人になると、決して売ることを急がない。なかなか落ち付いたもので、店番の手伝いに任せ、主人はぶらり一帯の景気を見て歩き、そうして、今度の市の相場を視察している。今夜は、八寸から一尺までがよく出るとか、ちゃんと目星をつける。そうして売れる方の側のものは仕舞い込んでしまう。ちょうど、素人のすることと反対のことをしている。そうして、売れ向きの悪い方から売って行って、それが売り切れになると、売れる方のを三本か四本位出して、蝋燭四本の物なら二本へらして薄ぐらくして置く、すると買い手の方は要求しているものが其所にあるから、値を聞く。売り手は他店にもう品切れと踏んでいるから、吹っ掛けて出る。一声負けたところで、利分は充分。