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ばくまついしんかいこだん
幕末維新懐古談
高村 光雲
68 楠公銅像の事
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,273 字 · 7 页
太刀は、加納、今村両先生の調べで割合正確なものになりましたけれども、それも楠公佩用の太刀が分ったのではありませんでした。太刀物の具がはっきりしないばかりでなく、第一、楠正成という人は大兵であったか、小兵だったか、それすら分りません。少なくも記録に拠所がなく、顔などは面長であったか、丸顔か、また肥えていたか、痩せていたか、そういうことが一切分らんのでした。しかし、楠公は古今の武将の中でも智略に勝れていた人であったことは争われぬ歴史上の事実でありますから、智の方面に傑出した相貌の顔に作りました。総じて智謀勝れたる軍略家は神経の働きの強く鋭い人でなくては出来ないことで、多くそういう側の人は肥え太っているというよりも、瘠せぎすの人が多いものですから、どっちかといえば瘠せ方の顔で、まず、中肉……したがって身長なども中背……身体全体能く緊張した体格に致したことで、大体において楠公は智者の心持を現わすよう心掛けたのでありました。
それから、またもう一つ問題となるのは楠公乗用の馬であります。楠公はどういう馬に乗っていたか、その馬が分らぬ。木曾駒か、奥州駒か、あるいは九州の産のものか、どうも見当が附かない。