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ばくまついしんかいこだん

幕末維新懐古談

高村 光雲

69 馬専門の彫刻家のこと

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,821 字 · 10 页

青空文庫

そうして、それが仮りに上手に出来たとして手柄は誰のものになるかということを考えると、後藤氏の骨折りは全く蔭のものになってしまう。どうで後藤氏の骨折りを借りなければならぬものとすれば、私の考えとして、どうも後藤氏の骨折りを殺すということは情において忍び得られぬところである……とこう私は考えたのであった。

で、これは後藤氏をハッキリと公のものにして表面へ立たせたいという考えが私の肚に決まったのでありました。これは当人の後藤氏の思惑は分らないが、私の良心としてはこう切に思われる。この事が単に私用的の仕事で、馬を彫るということならばとにかく、宮内省献納品で、主題は楠公、馬の大きさは前申した通りの大作、これほどのものを作るのであるから、私は、日頃から、後藤氏の口癖にもいってる言葉を思い出してさえも、これは打っ棄って置くべきことでないと思ったのであります。氏は、「自分は、多少の余財を作って等身大の馬を製えて招魂社にでも納めたい」というのが平素の願望で、一生に一度は等身大以上の大作をやりたいという希望は氏が常に私に話されていたのであります。こういう志を持っている人を蔭に使って、その出来栄がよかったとして、後藤氏の立場はどうなるか……こう思うと、もう私は矢も楯もたまらなくなって、この事は是非とも解決しなければならないと