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ばくまついしんかいこだん

幕末維新懐古談

高村 光雲

77 西町時代の弟子のこと

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,264 字 · 7 页

青空文庫

という話。それは気の毒なこと、人間は、性に合わない職業をするほど損なことはない。何か、身に合う仕事はないものかなど私はいいますと、重吉は、「あの臭気を嗅がない仕事なら何んでもします。もう二度と花川戸へ帰る気もしません」といっている。その容子はいかにも愍然でありました。

「では、私の家へ来てはどうかね」

といいますと、本人は大いによろこび、「どうか、そういうことに願えますなら何よりのことですが、私は兄貴のように年季を入れて彫り物の稽古をしたわけでもありませんから……」と心細がりますが、「何、これからでも、励めば一人前にはなれよう。しかし、花川戸の方をよく片をつけてから、来るようにしたがよかろう」といって帰りました。それで重吉は間もなく私の内弟子となったのでありました。

重吉は後に光重といって一人前になってから、妻を娶りましたが、この妻女は当時仲御徒町に住まっていた洋画の先生で川上冬崖氏の孫娘でした(川上未亡人の家作に美雲の親が住んでいたので、その知り合いから、娘を美雲の弟の重吉にもらったのです。で、冬崖氏の孫の川上邦世氏とは義理の兄弟になるはずです)。