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ひらがたけとうはんき
平ヶ岳登攀記
高頭 仁兵衛
「山岳 一〇の三」1916(大正5)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,907 字 · 27 页
人夫や荷物は、悉皆この東栄舘で世話することになっている、だから高橋農場へ通信するにはこの家に宛てるのである、橡尾又は温泉宿の外には人家がないから、大湯が湯谷村の奥底の部落である、大湯も橡尾又も名勝も旧跡もないから遊び場所としては、くだらない処である。
自分は本年の七月十四日に新来迎寺の一番下りに乗って、小千谷から馬車を雇って、小出の須田という旅館で中食した、兼ねて白井から依頼しておいたと見えて、下折立の区長の某が訪問して来て、昨年の十月に大林区の役人に同行した人夫を、明日中に高橋農場まで遣すという意を告げて去った、須田でゆっくりしていたので、夕刻に橡尾又の自在舘へ投宿した、荷物と人夫の都合があるので、自分の従者の渡辺権一を大湯の東栄舘に宿させた、夜になると渡辺が来て、東栄舘の主人が弟を同行してくれと依頼するが如何しようと聞く、承知の旨を回答した、翌朝の六時に仕度が出来て十分に出立した。
橡尾又温泉から佐梨川の支流の橋を渡ると、一方登りとなって二里十七町で枝折峠の嶺上に達する、その間には初終駒ヶ岳の白皚々たる残雪を有している雄姿を仰いで、すこぶる壮快の感じがする、道は楽ではあるが樹木の影がないから、日中に登るを避けてなるべく早朝に嶺上に達するがよい、温泉から二時間半ばかり費した、ここまでは信濃川