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へいげんのきととり

平原の木と鳥

小川 未明

「黒色戦線 第2次」1931(昭和6)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,473 字 · 7 页

青空文庫

その長い間には、いい月夜の晩もあれば、風の日もあり、また、雨の日もありました。なにかにつけて、昔の日が思い出されたのでした。

「夫は、どこへつれられていったろう? もう、帰ってくることもあるまい。」

こずえの先が、風に揺れるのを見ては、小さな胸がさわぎました。いつも、あんなようにしてふいに飛んできて、夫は近くの枝にとまったからです。

春の終わりのころに、三つの卵は、かわいらしい三羽のひなにかえりました。

「なんとみごとなせがれたちだろう!」

母鳥は、三羽の子供を見るたびに、父鳥にひと目でも見せてやりたく思いました。それは、畢竟、むなしい願いであると知りながら……。

子供たちは大きくなりました。夏のころには、もう、ひとりで付近を飛び歩けるようになりました。

「お母さん、あちらの高い木の方へ飛んでいってもいいですか?」と、子供たちは、ききました。

「もうすこし大きくならなければ、そして、羽が強くならなければ、おまえの敵に襲われたときにどうすることもできない。それまで、このやぶの中から、あまり遠くへいってはいけません。」と、母鳥は、諭しました。

あちらを見ると、こんもりとした、高いかしの木が、野原のまん中に立っていました。