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ねんぷ
年譜
宮本 百合子
「現代文学全集 第五十六巻」改造社(1931年までの年譜)、1931(昭和6)年3月、「宮本百合子研究」津人書房、1948(昭和23)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,820 字 · 36 页
一億一心、八紘一宇、聖戦、大東亜共栄圏というような狂信的用語が至るところに溢れた。文学はこれらの言葉の下に埋没した。
この緊迫した状態のもとで宮本の公判がはじまった。当時宮本は公判廷に出ても席に耐えないでベンチの上に横になる程疲労していたが、公判は続行された。すでに他の同志たちは分離公判が終結していた。被告宮本ただ一人、傍聴者は弁護士と妻と看守ばかりという法廷であった。戦争に気を奪われ左翼の存在を忘れさせられた人々は殺人の公判には傍聴に入っても治安維持法の公判廷には姿を見せなくなった。治安維持法の意味を知り、公判に関心をもつ人々は危険をおそれてあらわれなかった。
翌年の〔十二〕月一審判決まで不思議に人影の少い、しかし意味の深い「公開裁判」の法廷がひらかれつづけた。
私としては実に多くのことを学んだこの公判の期間をとおして、一九四三年一月スターリングラードにおいて死守の命令をうけたナチス軍が消息を絶ったというニュース、反ファシスト軍がイタリアのシチリア島に上陸して戦果をおさめ、ムッソリーニが辞職したニュース、イタリアの降伏などはまるで息づまる格子の間からさしこむ明るい光のようにうけとられた。