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こうふくにくらしたふたり

幸福に暮らした二人

小川 未明

「童話」1923(大正12)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,713 字 · 12 页

青空文庫

こんなにりっぱな街を造ることのできる人々だから、どんなに力があるであろう。また、どんなことでもなし得ないことはなかろうから、自分たち二人の命は、まったくこの人たちに自由になされるものだというように思ったからであります。

二人の黒んぼを見た、港の人々は口にこそ出していわなかったが、

「なんという怖ろしい顔つきをしている野蛮人であろう。人間を食うというのは、この種族ではなかろうか!」と、心に思ったのでありました。

南方の太陽に近い下の野原では、やしの木は、もっと元気よく、もっと葉が濃く、丈が高くしげっていました。二人はこの港の郊外にも、やしの木が、ところどころに影が黒く、日に照らされて立っているのを見たのであります。

この木の影を見たときに、二人は、どんなになつかしく思ったでありましょう。

「やはり夢ではなかった。また死んでいってからの極楽でもなかった。やはりこの世の中の景色なんだ。」

こう思って安心すると同時に、ここからは遠く隔たっている、故郷のことを思い出さずにはいられませんでした。このとき、ある日、海に出て、あらしのためにさらわれた記憶が蘇ったのでありました。