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おさなきひ

幼き日

小川 未明

「少年倶楽部」1929(昭和4)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,784 字 · 8 页

青空文庫

正ちゃんのお母さんは、正ちゃんが、よく眠ってくれたので喜びました。また、いつになく、あたりが、静かであったのをありがたく思いました。

すると、午後になってから、近所の人たちが、さも、心配そうな顔つきをして、入り口から、はいってくると、

「正ちゃんが、ご病気だそうですが、いかがでございますか……。」と、みまいを述べました。

「はい、ありがとうございます。なに、寝冷えなんでございますよ。」と、お母さんは、お礼をいいながら、どうして、こう早く近所の方がたに、正坊の病気ということがわかったろうかと、不思議に思っていました。すると、

「あの、お窓の下に、書いてあったものですから。」と、近所の人は、いったのでした。

「まあ、なにが書いてあるか、ちっとも知りませんが……。」と、正ちゃんのお母さんは、びっくりして、外に出てみますと、窓の下に、紙がはってありました。それを見るうちに、お母さんの目の中に、熱い涙がわいてきました。その幼げな文字で、すぐに、だれが、書いたかということがわかったからです。

「なんという、やさしい子だろう……。」と、お母さんは、思いました。

その後、正ちゃんの病気は、じきになおって、吉雄さんは、また、あいかわらず、学校から帰ると、こまをまわしたり、三輪車に乗せたりして、正ちゃんを喜ばせたのであります。