轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ようねんじだい

幼年時代・晩夏

堀 辰雄

堀辰雄『幼年時代・晩夏』。同一底本的分册已合并为一书。收入:幼年時代、三つの挿話、花を持てる女、朴の咲く頃。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,965 字 · 169 页

青空文庫

父は米次郎といった人で、維新前までは、霊岸島に店を構えて、諸大名がたのお金御用達を勤めていた。市人でも、苗字帯刀を許されていたほどの家がらだったそうである。母は茅野氏で、玉といい、これも神田の古い大きな箪笥屋の娘であった。玉は十六の年から本郷の加賀さまの奥へ仕えていた。そうして十九のときに米次郎のところに嫁いだが、そのときの婚礼はまだ随分はでなものだったらしい。いくつも高張提灯をかかげて、花嫁の一行が神田から霊岸島をさして練ってゆくと、丁度途中にめ組の喧嘩があった。そこで一行は迂回をしなければならぬかとためらっていると、それをどこかの大名の行列かとまちがえて、喧嘩をしていた鳶の者たちが急にさあっと途を開いたので、そのままその前を通ってゆくことが出来た。――そのことを又、皆はたいへん縁起がいいといって喜んだものだった。

だが、新郎新婦の運命はそれほどしあわせなものではなかった。やがて瓦解になった。それはたちまち若い夫婦に決定的な打撃を与えた。諸侯に貸し付けてあった金子も当分は取り立てる見込みもつかず、そこで米次郎は窮余の一策として、麻布の飯倉片町に居を移して、大黒屋という刀屋をひらいた。