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ゆうれいぶね

幽霊船

小川 未明

「赤い鳥」1924(大正13)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,633 字 · 8 页

青空文庫

けれど、乙は、熱心に、そのたびに火を新たにつけたのでした。しかし、待ちに待った船は、帰ってきませんでした。

「この暴風に、どこへ逃げただろうか? こんな広い、広い、海原をどこへゆくというところもないのに……沈んでしまったのではないだろうか?」

乙は、もはや、気が気ではありませんでした。そのうちに、怖ろしい夜は明け放れました。見渡すかぎり、大空は、ものすごく、大きな浪頭はうねりうねっています。そして、船の影すら見えないのでした。

乙は、独り、小さな無人島に残されたのでした。彼は、一日、岸に立って、船の帰るのを待っていました。しかし、昨日の暴風に難破したものか、船はその日も暮れかかったけれど、姿が見えぬのでありました。

三日めのことです。乙は、もうやせ衰えていました。やはり海岸に立って、いっしんに沖の方を見ていますと、なつかしい、見覚えのある仲間の乗っている船が、波を切って湾の中へはいってきました。甲も丙も、無事で船の上に動いているのがありありとして見えたのです。

「おうい。」と、乙は、両手を高く挙げて、沖に向かって叫びました。すると、あちらからも両手を高く挙げて、叫んでいたようです。