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ひろば
広場
宮本 百合子
「文芸」1940(昭和15)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,809 字 · 31 页
日本の雀よりすこし羽色が黒っぽいようなこの都会名物の雀たちが、日向にころがされてあるドラム罐の上から、チュと囀って飛び立ったりまた戻って来たりして遊んでいる。その有様を眺めて、朝子は列の動き出すのを待った。素子と二人分の切符で瓶が二本買えた。
それからパン屋へ行って、ここでも列について一日分のパンを買った。朝子は夜のお茶にたべるものがなかったことを思い出して、街角三つばかり先の食糧店の半地下室へ下りて行った。
入口近くにいくつも並んだ胡瓜漬の大樽、鮮やかな朱だの水色だの不思議な色をした塩漬キノコの桶。そんなものから立つ匂いは林檎だの、奥の方にどっさりつるしてある燻製魚だのの匂いと混りあって独特の親しみある匂いで天井の低い店じゅうを充しているのであった。朝子は買物袋をぶら下げながら、あちこち見てまわった。そして、手間どってイクラだの酸っぱくした牛乳だの小魚の燻製だのを買った。紅茶と石鹸がきょう入荷したばかりで、それをめあてに押しかけた人で、勘定場の列は全くのろのろと動いているのであった。靴の底を擦って皆が一歩一歩動いている石張床は、今に雪が降るようになると辷ってころばないために、入口の段々のところからずっと大鋸屑をまかれる。