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しょみんせいかつ

庶民生活

豊島 与志雄

「改造」1952(昭和27)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,353 字 · 21 页

青空文庫

嘗て内山が、無理算段をしながらさんざん芸者遊びをしたことがあるのを、私は知っていた。

朋子はただ単に利用されてるだけで、用心しないと遂にはひどい目に逢うし、内山に真の愛情などあるものか、という説があった。――これは前説の延長であって、悪意ばかりでなく一種の嫉妬の念も交ってるものだった。

朋子は生一本な性情なだけに、なんだか夢中になってるようだが、よくよく注意して進まないと、あとで取り返しのつかないことになって、とんだ汚名を着ないとも限らない、という説があった。――これは彼女の身を案ずる親切な意見で、必ずしも内山を対象としたものではなく、正常な再婚を希望する意も含まれていた。

朋子は金に吊られていて、月々いくらかの仕送りを受け、まあ生活はこれまでよりいくらか楽だろう、という説があった。――これは無関心な常識であって、峠の茶屋のおばさんが最も強硬に反対し、また、内山が時には飲み代にも窮してることがあるのを見ても、真相に遠いものだった。酒代は貸しにしてもよいとおばさんが言うのに、殆んど借りたことがないのも、朋子の援助によるものだったらしい。

火遊びなのかまたは真剣なのか、あの二人の真意はわれわれにはよく分らない、という説があった。