轻松读懂日语经典作品
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かれはむかしのかれならず
彼は昔の彼ならず
「世紀」1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,274 字 · 57 页
一生懸命に金をためて、十二三円たまったから、それを持ってカフェへ行き、もっともばからしく使って来ました。悔恨の情をあてにしたわけですね。」
「それで書けましたか。」
「駄目でした。」
僕は噴きだした。青扇も笑い出して、ホープをぽんと庭へほうった。
「小説というものはつまらないですねえ。どんなによいものを書いたところで、百年もまえにもっと立派な作品がちゃんとどこかにできてあるのだもの。もっと新しい、もっと明日の作品が百年まえにできてしまっているのですよ。せいぜい真似るだけだねえ。」
「そんなことはないだろう。あとのひとほど巧いと思うな。」
「どこからそんなだいそれた確信が得られるの? 軽々しくものを言っちゃいけない。どこからそんな確信が得られるのだ。よい作家はすぐれた独自の個性じゃないか。高い個性を創るのだ。渡り鳥には、それができないのです。」
日が暮れかけていた。青扇は団扇でしきりに臑の蚊を払っていた。すぐ近くに藪があるので、蚊も多いのである。
「けれど、無性格は天才の特質だともいうね。」
僕がこころみにそう言ってやると、青扇は、不満そうに口を尖らせては見せたものの、顔のどこやらが確かににたりと笑ったのだ。