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ひがんすぎまで

彼岸過迄

夏目 漱石

受朋友之托调查一个神秘女子的过去,却一步步走进她背后复杂的情感世界,真相远比你想象的更耐人寻味。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,333 字 · 385 页

青空文庫

二十四

叔父は人間社会の事に大抵通じているせいか、万に高を括る癖に、こういう自然界の現象に襲われるとじき驚ろく性質なのである。自分は千代子から渡された鏡を受け取って、最後に一枚の硝子越に海の底を眺めたが、かねて想像したと少しも異なるところのない極めて平凡な海の底が眼に入っただけである。そこには小さい岩が多少の凸凹を描いて一面に連なる間に、蒼黒い藻草が限りなく蔓延っていた。その藻草があたかも生温るい風に嬲られるように、波のうねりで静かにまた永久に細長い茎を前後に揺かした。

「市さん蛸が見えて」

「見えない」

僕は顔を上げた。千代子はまた首を突込んだ。彼女の被っていたへなへなの麦藁帽子の縁が水に浸って、船頭に操つられる船の勢に逆らうたびに、可憐な波をちょろちょろ起した。僕はその後に見える彼女の黒い髪と白い頸筋を、その顔よりも美くしく眺めていた。

「千代ちゃんには、目付かったかい」

「駄目よ。蛸なんかどこにも泳いでいやしないわ」

「よっぽど慣れないとなかなか目付ける訳に行かないんだそうです」

これは高木が千代子のために説明してくれた言葉であった。彼女は両手で桶を抑えたまま、船縁から乗り出した身体を高木の方へ捻じ曲げて、「道理で見えないのね」