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つれづれぐさのかんしょう
徒然草の鑑賞
寺田 寅彦
「文学」1934(昭和9)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,582 字 · 14 页
が中学校の教科書として広く行われていたという事が、一時代の国民思想といったようなものに存外かなりの影響を及ぼしたのかもしれないと思われる。
『徒然草』から受けた影響の一つと思わるるものに自分の俳諧に対する興味と理解の起原があるように思う。この本のところどころに現われる自然界と人間の交渉、例えば第十九段に四季の景物を列記したのでも、それが『枕草子』とどれだけ似ているとか、ちがうとかいう事はさておいて、その中には多分の俳諧がある。型式的概念的に堕した歌人の和歌などとは自ずからちがった自由な自然観が流露している。「青葉になりゆくまで、よろづにたゞ心をのみぞなやます」というような文句でも、国語の先生の講義ではとても述べられない俳諧がある。同じことを云った人が以前に何人あろうがそんなことは問題にならない。この文句が『徒然草』の中のこの場所にあって始めて生きて、そうして俳諧となるのである。ここで自分のいわゆる俳諧は心の自由、眼の自由によってのみ得られるものなのである。
兼好はこの書の中で色々の場所で心の自由を説いている。例えば第三十九段で法然上人が人から念仏の時に睡気が出たときどうすればいいかと聞かれたとき「目のさめたらんほど念仏し給へ」