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ふくしゅう

復讐

豊島 与志雄

「風雪」1950(昭和25)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,806 字 · 20 页

青空文庫

それにしても、先刻のことは半ば夢だったのかしら。いやそれよりも、夢の実現とかいう私の意気込みは、どうなってしまったのか。

腕がちくちく痛み、軽い頭痛がし、腰から足がだるく、身体違和の感じだった。口を利くのも懶い気で、しきりに私は彼女の顔を眺めた。彼女は私の眼を見返した。

「あなた、なんだかへんね。どうなすったの。」

私は微笑んだ。苦笑の形になったのだろう。

「どこか痛みますの。」

私は頭を振った。

「なにか、あたしに、お話があるんじゃないの。」

「話なんかないよ。こうして酒を飲んでおれば、それでいいじゃないか。」

「そう。そんならいいけれど……。」

間を置いて、どうしたのか、彼女は俄に私をじっと見つめてきた。

「なぜ?」

独語のように何かに反問して、私の言葉を待ってるらしい。

「君は、夢をみることがあるかい。」

「夢……めったにみないわ。」

「僕のことも?」

「ええ。なぜ?」

「おかしいなあ。僕のことを夢にみた筈だが……。」

「いいえ、夢ではなかったじゃないの。でも、びっくりしたわ。」

「夢ではなかったって……なんだい、それは。」

彼女はしばらく考えていたが、ちらと眉根を動かした。