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こころからおくるはくしゅ

心から送る拍手

宮本 百合子

「アカハタ」1948(昭和23)年5月9日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 771 字 · 2 页

青空文庫

六十八歳になられた作家森田草平氏が入党されたということは、多くの人にいろいろと語りかけるいみを持っています。人間は理性のある限り、年齢にかかわらず正しいと思う生活に前進するものであるという愉快な一つの例でもあります。早く老いこむ半封建的なまた個人主義的なこれまでの文士気質を一しゅうするものであります。

作家森田草平が平塚らいてうとの恋愛事件をとりあつかった「煤煙」という小説をかいたのは明治の末でした。ダヌンチオの「死の勝利」に影響されて当時の青鞜社風の女性の自我の覚醒と、対立者としての男性および恋愛との格闘を主題とした「煤煙」は自然主義的なリアリズムと、主観的ロマンチズムのまざりあった作品であったと記憶します。その森田氏は長篇「輪廻」をかきました。これも自然主義的なリアリズムの手法であり、部落の人々のゆがめられる人間性を主題としていたと思います。

いま作品の名をおもい出せませんが赤穂義士の仇討に対してそれを唯封建的な忠義の行為と見ず、浪士たちの経済的事情やその他の現実的いきさつを主眼として扱ったものもあったようです。

これから森田氏がどういう作品をかかれるか知らないけれども、六十八歳でこのまやかしだらけの日本の民主化に対して自分の社会人としての良心的在り場所を示されたことはうなずけます。