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こころにうずくよっきゅうがある

心に疼く欲求がある

宮本 百合子

「中央公論」文芸特集号第四号、1950(昭和25)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,908 字 · 24 页

青空文庫

人間の価値は、こんにちおそろしいテムポで、その真実を露出しつつある。彼が何であるかということによってではなく、彼はいかなることをなしつつあるかという事実によって。創作方法の問題とその可能性についても同じように現実的な角度からしっかりと直視されていいと思う。私は私にとって一番そのプラス・マイナスについて遠慮なく語れる自分の四年間の文学実験について、そこにあらわれた問題を内と外との関係から見て行こうとする。

二

「伸子」が書かれたのは一九二四年―六年のことであった。続篇を書きたいと思いはじめた三〇年のはじめから、断片的な試みがされたが、当時の条件がそれを困難にした。やっと一九四六年の初冬から、はっきり「伸子」にひきつづく作品として「二つの庭」を書きはじめ、「二つの庭」につづくものとして「道標」一部、二部、いまは第三部のおわり三分の一ばかりのところにいる。予定では、あと三巻ばかりの仕事がある。

「伸子」と「二つの庭」との間には、二〇年余のへだたりがあり、その時間の距離は、作者の生活をその環境とともに内外から変革させている。「伸子」をかいたときの作者は、全く自然発生にテーマにとりくんだのだった。