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こころのアンテナ

心のアンテナ

佐々木 邦

「現代」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,973 字 · 27 页

青空文庫

「そんならもう宜かろう」

「でも、あのまゝ大阪にいたらなんて言われると、私、苦労の甲斐がありませんからね」

「それじゃもう言うまい」

「然うして戴きましょう」

「大阪のことは言わないが、おれは未だ年寄じゃない積りだ。それ丈けは立派に断って置く」

「年寄でしょう。人生五十、昔ならもうソロ/\御隠居さんですわ」

「それは年から言えば年寄かも知れないが、未だ/\若い積りだ。美代子を見て、おれの子だと思わない人もある」

「何処の誰ですか? それは」

「方々にあるんだ」

「好い気なものね。彼方此方で若い/\って煽てられるのを真に受けて」

「人間、老込んじゃ駄目だ。お前だって未だ婆さんという程でもない」

「あら、あなたは私の本当の年を知っていらっしゃるから、そんなこと仰有るのよ。私、二三年前までは美代子と一緒に出掛けると、姉さんと間違えられましたわ」

銀二郎君は何方も何方だと思った。奥さんも五十に近い。本当の年は師匠が知っている丈けで、美代子さんも知らない。銀さんはそんなことを考えたら可笑しくなった。

「銀さん」

「へい」

「何が可笑しいの? あなたは」

と奥さんは目敏く銀二郎君の微笑を見つけた。