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こころのめ
心の芽
小川 未明
「少国民の友 22巻11号」1946(昭和21)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,922 字 · 10 页
そう思うと、たとえ自分の芸は未熟ながら、考えずにいられようか、平常はたんすや、行李の中へしまいこまれて、お気にいらなければ、そのまま虫にくわれ、永久に捨てられるのである。だれしもそうと知れば、良心のあるかぎり、自分の仕事に対して、あわれみと恥ずかしさを感ずるであろう。
つつましやかなる自然は、正吉にふたたび、子供の時分のまじり気ない無邪気さと、勇気を呼びもどしたのでした。それは、正しく生きようと希う人間のもつ、りっぱな精神でありました。
「おれは、自分のもてる能力が、たとえわずかばかりにせよ、これを発揮して、世の中の人々のために、役立てよう。」
ふとしたことが、彼の体に長い間宿り、眠っていた正義心と、芸術心の芽を、いっしょにめざめさせたのでした。
その後、彼の描いた、さまざまの水彩画や、鉛筆画が、工場の壁にはられました。
そして、素直で特色豊かな絵は、多くの工員たちの間に人気を呼びました。なぜなら、疲れたものの精神にあこがれと朗らかさをあたえることによって、彼らを慰めたからであります。