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こころのめ

心の芽

小川 未明

「少国民の友 22巻11号」1946(昭和21)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,922 字 · 10 页

青空文庫

「いいな、自然は!」と、彼は、眠りから目がさめたごとく、感嘆しました。

ひとり自然が美しいばかりでなかった。こうして、見、考え、喜び、希望をもつ、人間がまた偉大であり、貴い存在であるのを知りました。さらに、人間の一人である、自分が尊いものであるのを知ったのです。

正吉は、選挙に一票を投じてから、社会人になれたという、強い自覚をもつと同時に、自然の観察から、また仕事のうえにも大なる自信を得ました。

「おれのいままでの仕事は、みんなうそだったぞ。」

彼は、自分の部屋へもどると、大声で叫んだのです。そして、考えたのでした。

田舎から、町へ出て、縫い箔屋へ弟子入りをして、そして、習った細工は、すべて魂の入らない、ごまかしものだった。たとえば、帯や、羽織や、着物にしろ、刺繍をしてでき上がった、花や、ちょうや、鳥は、ただひな形に似せたのであり、絵本から写したものであるから、死んでいて、生きている姿でなかった。そればかりでなく、品物の使い道がまた死んでいた。というのは、金持ちの奥さまや、令嬢がたが着るためであって、ただそうしたおしゃれの人たちの虚栄心を満足させるに役立つだけだった。