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しんりしけんをよむ
『心理試験』を読む
平林 初之輔
「新青年 第六巻第一二号」1925(大正14)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,253 字 · 5 页
しかしそれが程度を越すと必然性を犠牲にしなければならなくなり、事件が人生と遊離してくる危険がある。もちろんウイットを主とするものにまで私は「人生味」を注文しはしない。また事件の進行を主とするものにもあまりにそれを注文しはしない。ただ氏の最も得意とする異常心理の描写物は、蔦のようにしっかりと人生にからみついている必要があると思う。
『心理試験』をよんで感心するのはむらがなく、どれも相当の苦心をもって書かれている点である。どれを読んでもごくつまらんというような感じがしないことである。そして作者の表現力と、豊かな常識と、努力とが三拍子そろっていて、危なっかしい、たどたどしいところが微塵もない点である。
たとえば、暗号などは、それだけ考えるにでも二日や三日はつぶさねばならぬような念のいったものがつかってある。ただし暗号もただ暗号のために暗号をつかったような形跡がないでもない。暗号のつかってある作は、「二銭銅貨」と「黒手組」と「日記帳」と「算盤が恋を語る話」とであるが、暗号がこれらの作品をすべて硬化しているように思われぬでもない。
要するに私は、この集におさめられた作品の全部を近頃にない非常な興味をもって一気に読了した。