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「しんりしけん」じょ

心理試験

小酒井 不木

小酒井不木『心理試験』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「心理試験」序、外務大臣の死、国枝史郎氏の人物と作品、ヂュパンとカリング、二重人格者、ポオとルヴェル、歴史的探偵小説の興味、誤った鑑定、安死術、恐ろしき贈物、怪談綺談、稀有の犯罪、体格検査、被尾行者、変な恋、「マリー・ロオジェ事件」の研究。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,338 字 · 197 页

青空文庫

実際ポオの書いている如く、ヂュパンの智嚢は「病的」であるほど深いのであるから、丁度カーライルが、彼の同時代の英国民を「四千万の愚物」と称して嘲ったように、警察の探偵を嘲ったのは無理もないことである。

が、実際の探偵から見れば探偵小説の探偵ほど実在性の少いものはなく、これはかのフランスの名探偵ゴロンが特に指摘した点である。しかし小説は畢竟小説であって実世間の記録ではないから、今後の探偵小説家も、よろしく、警察の探偵を罵り散らすような素人探偵を描くがよかろう。

いや、思わずも筆が脇道に走って、概念論を書いてしまったが、さて、ヂュパンに対して私がどんな感じを抱くかというに、まるで一種の機械を見るような感じがする。実際ヂュパンは thinking machine である。「マリー・ロージェー事件」を読んでいると、精巧な機械が、整然として運動し、以てその仕事を行ってゆく姿を見ているようである。それは丁度、むずかしい数学の問題が漸次に解かれて行く時のような喜びを読者に与えるけれど、喜びはただそれだけに過ぎない。即ち読者は事件の解決さるるのを喜ぶだけであって、解決したその人に対しては、さほどの親しさ、なつかしさを持つことが出来ないのである。