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「しんりしけん」じょ

心理試験

小酒井 不木

小酒井不木『心理試験』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「心理試験」序、外務大臣の死、国枝史郎氏の人物と作品、ヂュパンとカリング、二重人格者、ポオとルヴェル、歴史的探偵小説の興味、誤った鑑定、安死術、恐ろしき贈物、怪談綺談、稀有の犯罪、体格検査、被尾行者、変な恋、「マリー・ロオジェ事件」の研究。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,338 字 · 197 页

青空文庫

二重人格者

一

河村八九郎は今年二十歳の二重人格者である。

第一の人格で彼は大星由良之助となり、第二の人格で高師直となった。

彼がどうしてこのような二重人格者となったかは、はっきりわかっていない。父が大酒家であるという外、父系にも母系にもこれという精神異常者はなかった。ただ父方の曾祖父が、お月様を猫に噛ませようと長い間努力して成功せず、疲労の結果、人面疽にかかって死んだということがいささか注目に値するだけである。

母が芝居好きで、よく彼を劇場へ連れて行ったことは、はじめて彼が大星由良之助となった間接の原因に数えてよいかも知れない。

「委細承知……はァはァ」

これが彼の、人によばれた時の返事であった。

「獅子身中の虫とはおのれが事……」

これは彼が弟を折檻する時の言葉であった。

ある時、八九郎は、原因不明の熱病にかかった。三日三晩眠りつづけて目がさめた時、彼は、

「鮒じゃ、鮒じゃ」

と叫んだ。母親はお腹がすいたためであろうと思い、早速鮒を煮て持って行くと、

「さなきだにおもきが上のさよ衣」

こういって、彼は蒲団をはねのけたので、母親は、熱病のために彼が、高師直になったことを知ったのである。