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「しんりしけん」じょ
心理試験
小酒井 不木
小酒井不木『心理試験』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「心理試験」序、外務大臣の死、国枝史郎氏の人物と作品、ヂュパンとカリング、二重人格者、ポオとルヴェル、歴史的探偵小説の興味、誤った鑑定、安死術、恐ろしき贈物、怪談綺談、稀有の犯罪、体格検査、被尾行者、変な恋、「マリー・ロオジェ事件」の研究。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,338 字 · 197 页
蛋白質と澱粉と脂肪と食塩と水とビタミンさえあれば、味などはどうでもかまわぬと言われたら、どんなにか物足らないであろう。それと同じく、直接人心の向上に与らない文学は読むなといわれたら、恐らくやり切れるものではあるまいと思う。たとい探偵小説を一種の知識遊戯と見做したとて、クロスワードパズルと同じように、人々に手をつけさせずには置かぬだけの魅力を持っているのである。
探偵小説の題材として、最も多く犯罪が選ばれるのは、人々が犯罪に最も多くの興味を感ずるからであろう。然らば何故に人々が犯罪に興味を感ずるかというに、それは、自分の心の中に奥深くかくされている「悪」が、偶々他人が外部へあらわした悪のために振動させられ、その悪のヴァイブレーションが、その人に向って一種異様な好奇の感じを与えるからではあるまいか。つまり人々が犯罪に興味を持つのは、悪を恐怖するというよりも、何となく悪に愉悦を感ずるからだと私は解釈したいのである。然るに、悪いことをすれば、法律というもののために罰せられねばならない。従ってそこに法律という厭なものに触れる恐ろしさ遣瀬なさが生じて来る。この気持を探偵小説家が無視していると思っては間違いである。