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「しんりしけん」じょ

心理試験

小酒井 不木

小酒井不木『心理試験』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「心理試験」序、外務大臣の死、国枝史郎氏の人物と作品、ヂュパンとカリング、二重人格者、ポオとルヴェル、歴史的探偵小説の興味、誤った鑑定、安死術、恐ろしき贈物、怪談綺談、稀有の犯罪、体格検査、被尾行者、変な恋、「マリー・ロオジェ事件」の研究。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,338 字 · 197 页

青空文庫

診察を受けに来るものさえあり、私も毎日二里や三里ずつは、馬に乗って往診するのでありました。

内科の教室に居ました時分から、私は沢山の患者の臨終に出逢って、安死術ということをしみじみ考えたのであります。決して助からぬ運命を持った患者の死に際に、カンフルを始めその他の強心剤を与えて、弱りつつある心臓を無理に興奮せしめ、患者の苦痛を徒らに長びかすということは果して当を得た処置ということが出来るであろうか。癌腫の患者などの臨終には、むしろモルヒネの大量でも与えて、苦痛を完全に除き、眠るが如く死なせた方が、どれ程、患者に取って功徳になるか知れないではあるまいか。と、考えるのが常でありました。実際、急性腹膜炎などの患者の苦しみ方は、到底見るに堪えぬほど悲惨なものであります。寝台の上を七転八倒して、悲鳴をあげつつもがく有様を見ては、心を鬼にしなければ、強心剤を与えることは出来ません。又、脳膜炎に罹って意識を失い、疼痛だけを激烈に感ずるらしい患者などは、万が一にすらも恢復する見込は無いのですから、一刻も早く安らかに死なせてやるのが、人道上正しいのでありますまいか。