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しんれいさつじんじけん
心霊殺人事件
「別冊小説新潮 第八巻第一四号(創作二十二人集)」1954(昭和29)年10月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,557 字 · 52 页
かたわらを通りすぎたのは子供のような感じだったと云ってるぞ
――暗闇のことが判るものですか
――暗闇だからバレるはずがないと思っているのだ
――考えてみて下さい。父を殺さなくッたッて、やがて父が死んだあかつきは財産はぼくの物ではありませんか。わざわざ殺す必要があるものですか
――ビルマの孫がくると財産はお前の物ではなくなるのだ
――そのための心霊術実験会ではありませんか。伊勢崎さんは絶対にインチキだから心配するなと力をつけて下さっています。この実験会の結果、父のビルマ訪問が不可能になるのを信じていたのですから、父を殺す必要はないのです。だいたいぼくはシガない客ひき番頭ですが、ともかく暮しにこまらない定職があって多少の貯金もあるほどですから、今すぐに父の財産をつぐ必要なぞないのです。老後安穏に暮せるだけで結構で、今のうちはその希望とともに客ひき番頭でノラクラ暮している方がむしろ生きガイやハリがあってたのしい毎日だったんですよ。今すぐ父のあとをつぐというのは、むしろ怖しくて望ましいことではなかったのです
――伊勢崎九太夫は吉田八十松の心霊術をほめてるぞ。