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ちゅうぎ

忠義

芥川 竜之介

武士板仓修理被神经衰弱折磨,连畳角都像刀刃刺痛神经。身边无人理解,他还能守住这份忠义吗?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,171 字 · 27 页

青空文庫

ばかりである。「己は苦しんでいる。が、誰も己の苦しみを察してくれるものがない。」――そう思う事が、既に彼には一倍の苦痛であった。

修理の神経衰弱は、この周囲の無理解のために、一層昂進の度を早めたらしい。彼は、事毎に興奮した。隣屋敷まで聞えそうな声で、わめき立てた事も一再ではない。刀架の刀に手のかかった事も、度々ある。そう云う時の彼はほとんど誰の眼にも、別人のようになってしまう。ふだん黄いろく肉の落ちた顔が、どこと云う事なく痙攣して眼の色まで妙に殺気立って来る。そうして、発作が甚しくなると、必ず左右の鬢の毛を、ふるえる両手で、かきむしり始める。――近習の者は、皆この鬢をむしるのを、彼の逆上した索引にした。そう云う時には、互に警め合って、誰も彼の側へ近づくものがない。

発狂――こう云う怖れは、修理自身にもあった。周囲が、それを感じていたのは云うまでもない。修理は勿論、この周囲の持っている怖れには反感を抱いている。しかし彼自身の感ずる怖れには、始めから反抗のしようがない。彼は、発作が止んで、前よりも一層幽鬱な心が重く頭を圧して来ると、時としてこの怖れが、稲妻のように、己を脅かすのを意識した。