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しそうどういんろん
思想動員論
戸坂 潤
「日本評論」日本評論社、1937(昭和12)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,012 字 · 18 页
このように、思想動員が一旦実施された暁は、いつまでも体系的な執着力を持っているという関係は、之をその裏から云えば、思想動員などというものはそう簡単に実現出来るものではないということをも告げているわけである。無論思想動員を行なおうという試みや企ては常に実在する。だがそれの成功的な実現は、そう容易に見られるものではないのだ。つまり思想の動員というのは、一時的な思想体制のことではあり得ないだけに、それだけ実は動員という性質を充分に備え得ないものだから、他の領域で比較的簡単に行なえるような意味での動員も之を思想について行なうことは、普通世間が想像しているほど安直に成立はしないわけなのである。
この点は後々のために記憶して貰っておくこととして、少なくとも今日の日本で思想動員と呼ばれていい事態が濃厚に急迫しつつあることを、誰しも疑う者はいない。私などはこの動員が(夫には色々の内容がある)成功するとは考えていないのだが、それの試みと企てとが圧倒的であることに目をつむるものはいない筈である。思想統制・文化統制・それから言論統制、ということは之までよく口にされた。