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かいきいっせきばなし

怪奇一夕話

岡本 綺堂

「中央公論」1935(昭和10)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,745 字 · 18 页

青空文庫

それでも高点の部に入って、いささか天狗の鼻を高くしたことがある。そこで、これから書く随筆まがいの物も、春は春らしく、前に掲げた狂歌程度で御免を蒙ろうと思う。百物語式の物凄い話は――と云っても、実はそんな怪談を沢山に知っているのでは無い。――秋の雨がそぼそぼと降って、遠寺の鐘がボーンと聞えて来るような時節までお預かりを願って置くことにしたい。

なんと云っても、怪談は支那が本場である。日本に伝来の怪談は畢竟わが国産ではなく、支那大陸からの輸入品が多い、就ては、先ず支那を中心として、日本と外国の怪奇談を少しく語りたい。

論語に「子は怪力乱神を語らず。」とある。この解釈に二様あって、普通は孔子が妖怪を信じないと云うように受取られているのであるが、又一説には、孔子は妖怪を語らないと云うに過ぎないのであって、妖怪を信じないと云うのではない。孔子も世に妖怪のあることを認めてはいるが、そんなことを妄りに口にしないのであるという。成程、そういえば然ういう風に解釈されないことも無い。「語らず」と「信ぜず」とは、少しく意味が違うように思われる。

現にその孔子も妖怪に襲われている。