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かいきじんぞうとう

怪奇人造島

寺島 柾史

「日本少年 付録」1937(昭和12)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,159 字 · 87 页

青空文庫

鯨なら、やがて海底へ沈んでしまうだろう。そのときは、それまでだ。一緒に海底見物と洒落ようか。

僕は、そんな暢気なことを考えて、悠々と怪物の背中で横になってみたが、怪物は、一向に海底へ沈んで往く様子もない。僕をのせたまま、潮流に乗って、何処へか流されて往くようだ。

怪物の背中に横になっていると、夜風が肌を刺すようだ。しかし、浮袋につかまって、巨浪に飜弄されているのとちがって、飛沫を浴びることもなければ、手足を動かすこともいらない。濡鼠になって寒いが、極度に疲れているので、いつか睡気を催して来た。

「眠って転げ落ちたら大変だ」

そうおもいながらも、うとうととなる。そこで僕は、怪物の背中で、腹這いになった。これなら、なかなか転げ落つることもあるまい。

僕は、正体のわからぬ怪物の背中で、そのまま、深い眠りに落ちてしまった。

あッ! 氷山?

幾時間眠ったろう。ふと眼が醒めた。

朝の太陽が、僕の背中をあたためてくれた。

「おお、こいつは、素敵素敵」

僕は、怪物の背中に起き直って、四辺の景色を眺め入った。相変らず、水また水の、茫々たる海原だが、いつか北洋の圏内を去ったとみえて、空気も爽かで、吹く風も暖かだ。