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こいのいっぱいうり
恋の一杯売
吉行 エイスケ
「文芸公論」昭和2年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,183 字 · 15 页
しかし、私は横田の生活が羨ましくはない。私には、私を愛してくれる数人の女達によって、運命は咲き誇っているのだ。私は哀れな男ではない。私は傲岸な男だ。私が彼女達を愛するのは女達の男道楽さめやすい色恋をシャム料理法と珈琲色の皮膚に刺繍した。いまでは犬でさえ逃げ出す女達に、私は容易に身を委すことができるようになった。
私がホテルの寝台でしおれかかったビリダリアの夜の花。
必ず、私が眼覚めたとき憂鬱な少女を、その頃、暮れかかった寝室の側に見出した。私が眼覚めたのを彼女が感ずると彼女は、必ず Melins の帯をといて、私の…………………と囁いた。
「妾、朝からまっていたのです」
やがて暫しの後、彼女の後姿が、混合酒の触感を撒いて廊下から消えると、私は地下室の湯殿で未来を夢みる。私は現代が、夜光虫と欧羅巴スタイルのグランド・ホテル・ド・横浜のダンシング・ホールと空中の軽業だと断定する。
私の恋人花田君子は一刻後、私の部屋を訪ねてくるだろう。彼女も現代を形づくる発育不完全、性を失った女、太平洋を航海しているアラビア漁船の窓硝子に似た黒い乳房、戦争と東洋文明が女性をマゾヒストにしてしまう。