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れんあいきょくせん
恋愛曲線
小酒井 不木
「新青年」1926(大正15)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,514 字 · 26 页
ジギタリス剤、アトロピン、ムスカリン等の猛毒からアドレナリン、カンフル、カフェイン等の薬剤に至るまで心臓に作用する毒物薬物の殆どすべてにわたって、僕は一々の曲線を作り上げたのだ。然し、これだけのことは、別に新らしい研究ではなく、すでに多くの人によって試みられた所であって、要するに僕の本研究の対照試験に過ぎなかった。
然らば僕の本研究は何物であるかというに、一口にいえば、各種の情緒と心臓機能との関係だ。即ち俗にいう喜怒哀楽の諸情が発現したとき、心臓はその電気発生の状態に如何なる変化を来すかということだ。誰しも経験するとおり、驚いた時や怒ったときには、心臓の鼓動が変化する。僕はそれを切り出した心臓について、所謂客観的に観察したいと思ったのだ。恐怖の際に血中にアドレナリンが増加するという事実は既に他の学者の認めたところであるから、恐怖の際の血液を、切り出した心臓に通じたならば、アドレナリンを通じたときと、同じ変化が曲線の上にあらわれるべき筈だ。この事実から類推するときは、恐怖以外の他の諸情緒の際にも、血液に何等かの変化があるべき筈で、従って、動物に喜怒哀楽の諸情を起さしめ、その時の血液を、切り出した心臓に通じて、電気心働計によって曲線を撮ったならば、各種の情緒発現の際、血液中にどういう性質の物質があらわれるか