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れんあいきょくせん
恋愛曲線
小酒井 不木
「新青年」1926(大正15)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,514 字 · 26 页
切り離すのだ。
切り出した心臓は、すぐさま、一旦摂氏三十七度内外に温めたロック氏液を盛った皿の中に入れるのだ。栗の実ほどの大きさをした兎の心臓は、さすがにぐったりして一時搏動を中止する。そこで、手早く、肺動脈と肺静脈の切り口をしばり、大動脈と大静脈の切り口にガラス管を結びつけ、更に取り出して特別に設けられた一尺立方ほどの箱の中の、適当な場所にガラス管を結びつけ、摂氏三十七度に温めたロック氏液を通ずると、心臓はみごとに搏ち出すのだ。このロック氏液というのは一プロセントの塩化ナトリウム、〇・二プロセントの塩化カルシウム、〇・二プロセントの塩化カリウム、〇・一プロセントの重炭酸ナトリウムの水溶液であって、ほゞ血液中の塩類成分の量に一致して居るから、心臓は血液を送りこまれて居ると同じ状態になって、その搏動を続けるのだ。然し、たゞこの液を通ずるだけでは、心臓も遂には疲れて来る。いかに生に執着の強い心臓でも、外からエネルギーを仰がなければ、動き続けることは出来ない。卑近な言葉で言えば、食物が欠乏しては動けない。そこで通常この液の中へ、エネルギーの源即ち心臓の食物として、少量の血清アルブミンか又は葡萄糖を加えると、心臓は長い間搏動を続けるのである。