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おそろしきさくご
恐ろしき錯誤
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1923(大正12)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,075 字 · 46 页
そして、爆発した様に笑い出した。
「ハッハッハッハッ…………ヘッヘッヘッヘッヘッ…………フッフッフッフッ…………」
彼は身を悶えて笑い続けた。丁度、朝顔日記の笑薬の段に出て来る悪医者の様に、止め度もなく笑いこけた。
こうして、可哀相な北川氏は発狂して了った。彼の発狂の原因が何ものであったか、我々は今俄かにそれを判断することは出来ない。
併し、妙子の変死がその最も重大なる遠因であって、野本氏の手紙がその最も重大なる近因であったと推定するのが、まず誤りのない所であろう。その野本氏の手紙には左の様な文句が綴られてあった。
前略
昨日は意外の失策御無礼の段幾重にも御容謝被下度候
実は数日来極度の多忙にてろくろく夜の目も寝ず仕事に没頭致居連日の睡眠不足より遂にあの不始末に及びたる次第に候貴君の御話も幽かには記憶致し居候得共何時御立帰りになりたることやらまるで前後忘却貴君の前をも憚らずいぎたなく熟睡に及びたる一埒何とも申訳の言葉も無之候朧気乍ら昨日の御話に依れば令閨御死去に関して何か疑惑を抱かれ居る様拝察致候得共常識より判断致せば御話の如き儀はよも有之間敷かと被存候愛人を失われたる御悲歎の程は千万御同情申上候得共余りに其事のみ思詰められては御健康にも宜しからず此際転地でも為され十分御静養相成候様差出がましき次第ながら旧友の