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きょうふのくちぶえ
恐怖の口笛
海野 十三
「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页
「生ける屍――貴下の仰有ることなら、屍になっていますわ」
といってニッコリ微笑んだが、攫われた千鳥は一体何を感謝しているのだろう。
覆面探偵の危難
矢走千鳥の誘拐事件は、なんの手懸りもなく、それから一日過ぎた。
雁金検事はそのことで、大江山捜査課長を検事局の一室に招いた。
「君の怠慢にますます感謝するよ。いよいよ儂たちは新聞の社会面でレコード破りの人気者となったよ。第一千鳥の神隠しはどうなったんだ。玉川ゴルフ場から十分ぐらいの半径の中なら、一軒一軒当っていっても多寡が知れているではないか。どうして分らぬのか、分らんでいる方が六ヶ敷いと思うが……」
「イヤそれが不思議にも、どうしても分らないのです。ひょっとすると、犯人は夜のうちに千鳥をもっと遠いところに移したかもしれないのです。しかし御安心下さい。あの犯人も吸血鬼も、同一人物だと睨んでいて、別途から犯人を探しています」
「別途からというと、君の覘っている犯人というのは誰だい」
「ポントス――つまりキャバレーの失踪した主人ですネ。部下は懸命に捜索に当っています。今明日中にきっと発見してみせますから」
「彼奴はもう死んでいるのじゃないか」