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きょうふのくちぶえ

恐怖の口笛

海野 十三

「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页

青空文庫

――さあ、もう時間は剰すところ一分だよ」

「君に悔い改めさせたいばかりに、僕は君の自由になっているのが分らないのか」

「感傷はよせよ。みっともない」

「ああ、到頭僕の力には及ばないのか。……では僕は一切を諦めて殺されよう。だが只一つ最後に訊きたい。君はなぜ吸血の味を知ったのだ。なにが君を、そんなに恐ろしい吸血鬼にしたのだ」

「そんなことなら、あの世への土産に聞かせてあげよう。――それは先祖から伝わる遺伝なのだよ。パチノを知っているだろう。あれは九人の部下が死ぬと、一人残らず血を吸いとったのだよ。妾はそれを遺書の中から読んだ。……ああ、その遺書が手に入らなかったら、妾は吸血鬼とならずに済んだかもしれない。恐ろしい運命だ」

「そうか、パチノが先祖から承けついだ吸血病か、そうして遂に君にまで伝わったのか、パチノの曾孫にあたる吾が……」

「お黙り!――」と、悪鬼は足を揚げて、青竜王の脾腹をドンと蹴った。

「ウーム」

と彼が呻きながら、その場に悶絶した。

「ああ、それ以上の悪罵に妾が堪えられると思っているのかい。約束の五分間以上喋らせるような甘い妾ではないよ。お前さんはよくもこの妾の邪魔をしたネ」