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きょうふのくちぶえ
恐怖の口笛
海野 十三
「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页
――ああ、とうとう探偵の覆面は取り去られたのだった。いま都下に絶対の信用を博している名探偵青竜王の正体は、白面の青年西一郎だったのだ。そして吸血鬼に屠られた四郎少年こそは、彼と血を分けた愛弟だったのだ!
「ああ、あたしは……」と妖女は胸を大濤のように、はげしく慄わせた。思いがけない大きな驚きに全く途方に暮れ果てたという形だった。
「やっぱり、刺し殺すのだ!」
と叫んで、妖女は再び鋭いナイフをふりあげたが、やがて力なく腕が下りた。
「どうして貴下が殺せましょう。妾の運命もこれまでだ!」
そういった妖女は、青竜王の身近くによると、戒めの縄をズタズタに引き切った。しかし青竜王は覆面をとられたことさえ気がつかない。――妖女はいつの間にか、この荒れ果てた部屋から姿を消してしまった。
かくて風前の灯のように危かった青竜王の生命は、僅かに死の一歩手前で助かった。
大団円、死の舞踊
「――検事さん! 雁金さんは何処へ行かれた?」
と、慌ただしく、検事局の宿直室に飛びこんで来たのは、大江山捜査課長だった。
「おう、どうしたかネ、大江山君」
検事は書見をやめて、大きな机の陰から顔をあげた。