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きょうふのくちぶえ

恐怖の口笛

海野 十三

「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页

青空文庫

「君は少年の屍体の辺もよく探してみたかネ」

「もちろん懐中電灯で探したんだけれど、何遍やってみても見つからなかったんです」

「ほう、そうかネ」

少年は青竜王の顔をしげしげ見ていたが「まさか青竜王は赤星ジュリアたちを怪しんでいるのじゃないでしょうネ」

青竜王はそれに応えようともせず、いつまでも黙ってパイプを吸いつづけていた。

そのとき卓上電話のベルがリリリンと喧しく鳴り響いた。勇少年が受話器をとりあげて出てみると、向うは赤星ジュリアを尋ねていった筈の大辻の声だった。

「ナニ丸ノ内で大騒ぎが始まったって? 青竜王が帰っていられるから、いま代るから待っているんだよ」

といって、受話器を譲った。

青竜王はうむうむと聴いていたが、やがて電話を切った。

「どうしたんです、青竜王」

「なアに、痣蟹が竜宮劇場の裏口を通っていたのを発見して、また警官隊と銃火を交えたのだそうだ。痣蟹はとうとう逃げてしまったので、疲れ儲けだ。しかし痣蟹は竜宮劇場の外を歩いていたのか、それとも中から出て来たのか分らないそうだ」

竜宮劇場というと、誰でもすぐジュリアを思いうかべる、やはりジュリアは事件に関係があるのだろうか。