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きょうふのくちぶえ
恐怖の口笛
海野 十三
「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页
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宏大な大学の構内は、森林に囲まれて静寂そのものであった。殊にこれは夜更の十二時のことであった。梟がときどきホウホウと梢に鳴いて、まるで墓場のように無気味であった。木造の背の高い古ぼけた各教室は、納骨堂が化けているようであった。そしてどの窓も真暗であった。ただ一つ、消し忘れたかのように、また魔物の眼玉のように、黄色い光が窓から洩れている建物があった。それは法医学教室の解剖室から洩れてくる光だった。
近づいてみても、カーテンが深く下ろしてあるので窓の中にはなにがあるのやら、様子が分らなかった。ただ森閑とした夜の幕を破ってときどきガチャリという金属の触れあう音が聞えた。その怪しい物音が、室内に今起りつつある光景をハッキリ物語っているのだった。
そこは馬蹄形の急な階段式机が何重にも高く聳えている教室であった。中央の大きな黒板に向いあって、真白な解剖台がポツンと置かれてあった。その傍にはもう一つ小さい台があって、キラキラ光る大小さまざまのメスが並んでいた。解剖台の上には白蝋のような屍体が横たわっているが、身長から云ってどうやら少年のものらしい。