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きょうふのくちぶえ
恐怖の口笛
海野 十三
「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页
といっているとき、ジジジーンと、壁にかけてある大きなベルが鳴りひびいた。それはあまりに突然のことだったので、教授は、
「ややッ――」
とその場に飛び上ったほどだった。
「何でしょう、いまごろ?」
「ハテナ誰か来たのかな。この夜更に変だなア」と教授は頭を傾げた。
そのとき、またベルがジジジーンと、喧しく鳴った。
「ちょっと見て来よう」
と教授はメスを下に置くと、扉をあけて廊下へ出ていった。廊下は長かった。漸く入口のところへ出て、パッと電灯をつけた。
「誰だな。――」
と叫んだが、何の声もしない。
「誰だな。――」
そういって硝子越しに、暗い外を透してみていた教授は、何に駭いたか、
「呀ッ、これはいかん」といってその場に尻餅をつくと、大声に西一郎を呼んだ。
その声はたしかに解剖室に聞えた筈だったけれど、西はどうしたのか、なかなか出て来なかった。蝋山教授は俄かに恐怖のドン底に落ちて、急に口が出なくなって、手足をバタバタするだけだった。
「どうしたんです、先生!」
元気な声が奥から聞えると、やっと西一郎が駈けつけた。西にやっと聞えたらしい。
「いま怪しい奴が、その硝子のところからこっちを睨んだ。