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きょうふのまぼろしへいだんいん
恐怖の幻兵団員
大倉 燁子
「オール読切 二巻五号」1950(昭和25)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,784 字 · 28 页
恋の犯人
恋の犯人
真面目で気の弱い一雄は、責任感も人一倍強く、任務を遂行しなければ生命を奪われる。しかし、無理強いに負されたのだから、何とかしてそれを逃れたいと思う、この二つの悩みに悶えぬいていたので、時には正気の人とは思えぬような振舞いをすることもありました。恐怖から気が狂ったのではないかと思いました。
私はどう慰めていいかわからなかったので、絶対秘密を誓ったにかかわらず、薫さんにだけこのことを打ち開けて相談しました。が、彼にもいい智慧はなく、私と一緒にただ気をもむだけでした。
まだ合言葉をもって現われた者もなければ、何の命令もないのです。実際には何もしていなかったのです。それだのに夫は誓約したからにはいつ命令を受けるかわからない、どこから、どんな人が出現するかわからない、と取越苦労をして、心配しておりました。
父の重態が伝えられるようになった一週間前のこと、私共が本邸へ行っている不在中にこのカーネーションが見知らぬ一婦人によって届けられましたのです。
夫は真青になって、震るえ上りました。カーネーションのしべの中に薄い紙が折り込んであった、それに細かく何か認めてあったそうですが、夫は直ちにマッチをすって焼いてしまいましたので、私は見ませんでした。