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きょうふのまぼろしへいだんいん
恐怖の幻兵団員
大倉 燁子
「オール読切 二巻五号」1950(昭和25)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,784 字 · 28 页
夫人の家を辞してから、翌日の夜の十時までの間、私は一睡もする暇がないほど忙しかった。私は夫人の言葉のうちに、あるヒントを掴んだのだった。それに自信を得たので、思い切った行動が出来た。実にその三十余時間の活動ぶりは自分ながら感心するほど目ざましいものであった。
松岡旧伯爵は危篤を伝えられながら、高齢にも似合わず、不思議な生命力があって、臨終にはまだ間がありそうだ、と、主治医は語った。
枕許には伯爵夫人と一雄夫人が詰めきり、次男の薫が時折交代していた。次の間には近親者一同がぎっしりと詰めきっている。静かな病室からは咳一つ聞えなかった。
女中から受取った銀盆の名刺を、看護婦は無言で、薫へ渡した。
無言で受取った薫は名刺の上に書かれた文字を見ると、サッと顔いろを変え、よろめくように病室を出た。
名刺には、
「あなたの監視中の病人が脱出しました。直ぐおいで下さい」
と、あった。
薫は眼が眩んで、そこにいた看護婦を突き飛ばし、一散にアトリエに走った。
アトリエの中は真暗だった。電球が切れていたのを、まだ取りかえる暇がなかったのだ。彼は手探りで、まず地下室の鍵を開け、階段を降りかけると、下から低い声で、