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きょうふじょう

恐怖城 他5編

佐左木 俊郎

佐左木俊郎『恐怖城 他5編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:恐怖城、或る嬰児殺しの動機、街頭の偽映鏡、仮装観桜会、猟奇の街、錯覚の拷問室。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 143,735 字 · 290 页

青空文庫

いずれにしろ、前田弥平氏の計画の第一歩はとにかく成功したのだった。

5

観桜会の場所は、武蔵境の小金井であった。同じ青と白との縞の着物を着て、同じ仮面をつけた六、七十人の職工たちは、ただ一人背広を着ている工場主を取り巻くようにして長い土堤の上を雪崩れていった。

用水堀の両側の土堤からその中央の流れの上に、桜の花は淡紅色の霞のように咲きつづけていた。搾りたての牛乳のように微かに温かで柔らかな空気の中に、桜の花はどこまでもおっとりと誇らかに咲いているのであった。

花見の人たちはその下を潮騒のように練っていた。幾つも幾つも団体の仮装が通った。喚声が高らかに至るところから上がった。子供の泣き声がした。喧嘩があった。急拵えの茶店からは大声に客を呼んでいた。それは花と人間との接触ではなかった。人間と人間との接触! まるで、人間の洪水を見に来ているようなものだった。そして、桜の花のほうがかえってある一つの落ち着きをもって、じっとこの人間の騒々しい芝居を眺めていた。

その雑踏の中でも、前田鉄工場の仮装団はとくに目立っていた。彼らはその仮装が同じばかりでなく、同じような昂奮で語り、同じ声で叫び、そしてときどき彼らは労働歌を合唱した。